詩歌

森 景

森景

緑の森の奏でる調べ

耳をすますけものすら

気付かぬほどのかすかな響き

風の奏でる光のハープ

 

蒼き森の奏でる調べ

焼きつく日差しを受けながら

なおも沸立つ木々のリズム

大地の鳴らす太古のドラム

 

紅き森の奏でる調べ

燃える手のひら空に広げ

散り行く刹那に紅をさす

篝火(かがり)にはぜる恋の琴

 

白き森の奏でる調べ

枯れた木立に化粧して

霧も凍れと息を吹く

光に軋む 氷のベル

 

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夢の工場

もう20年以上前のこと
ほとんど気の合う常連だけがお客の静かな店がありました。
そのお店へのオマージュを一篇


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ふと むかしむかしのおみせを思い出しました。

そのお店の名前は「夢の工場」
装具は全部真っ黒で高い天井から吊られた電灯が唯一の店の灯かり
その下に大きなテーブルが一つ。
その回りに背のたかい椅子が囲み、いつものお客を待っている。
小さなロフトには誰が弾くでもないピアノが一つ。

いつものお客・・・それはその店と同じ名前の劇団員がほとんどで、
夕方になるとぽつりぽつりと決まった席が埋まってゆく。
みんな ママの得意なキッシュの虜。
そして あたたかいスパイスコーヒー。

席が埋まるとママは一番端の席にこしかけ、
微笑みながら他愛のない話にあいづちを打つ。

そういえば この店にも特別なデザートが一つ。
その名も「ファイアーマンのお誕生日」
お客さんのバースデイ専用の特別なスィーツ

もちろんメニューにものってないけれど、
ママは みんなの誕生日をちゃんと覚えていて、
夜の8時にそっと運んで来てくれる。

真っ赤なラズベリーソースが象徴的だけど
一度として同じ物はなかったな・・・

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たまゆら

春の宵にちなんで、昔作った恋歌などひとつ


たまゆら

金糸銀糸の織り成す錦
舞うは桜の白拍子
十六夜の月蒼く
遠く響くは琴線の音
ゆらゆらたまゆら耳すまし
春香にゆだねる目蓋の重み
纏える風に想いをたくし
さぞや恋し さも恋し

返歌

宵の闇とて舞う花の
雪の如くは月明かり
十と三つの縦糸に
叶わぬ術に爪を立て
揺れる想いに紅をさす

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