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シルフィード

今回はちょっと不思議なお話にしましょう。

もう30年以上前、私が高校生のころの夏の暑い日。
友人と2人で福岡の地元では有名な「英彦山」と言う山に登った時の話。
標高は1200m程度ですが、頂上の参道までの山道は割りと整備されていてそんなに険しいと言うイメージはありませんが、そのときの計画では登頂後そばにある「障子ヶ岳」と言う山を越えて筑前岩屋駅に下山する予定でした。
英彦山までは何のトラブルもなく頂上の神社で一休みした後にすぐに障子ヶ岳へのコースを取り、尾根伝いの道をまた登りに入ったころからやや雲行きが怪しくなって障子ヶ岳に登頂したときには山頂は雲に飲まれてしまい視界がほとんど無くなってしまってある程度晴れるまでは身動きの取れない状態のまま午後3時を回ったところで少しずつ雲が切れ始めたので友人と話し合った結果3時間あれば筑前岩屋駅まで降りることができるだろうと言う今考えるとあさはかな結論に至って予定のコースを下山し始めた。
さて どのくらい下ったかはわからないのだけれどまたも雲が濃く立ち込めてきてやむなくそこで立ち止まるしかなくなりその場に腰を下ろして時計を見ると既に5時近く。
これまた若気の至りと言うか2人の決断はなんと「暗くなる前に下りよう」・・・と。
視界が1mもない中を一応2人をロープで繋いで私が先になって下り始めた。
下り始めてしばらくたっても雲は一向にはれる気配はなく視界は足元が見える程度だけれどまだ十分に明るい。
ふと気になって時計を見るとちょうど5時・・・?!
そのとき友人に「どれくらい歩いたっけ?」って聞くと「さっき休んでから30分くらいだろ」・・と答えが返ってきたので「時計見てみろよ」って言うとちょっとびっくりして「そんなもんだったっけ? 急げばなんとかなりそうやね」・・と
首をかしげながら一歩踏み出そうとしたときにちょうど目のすぐ前を風が吹いた・・と言うか何かが通り過ぎたようだったので立ち止まると爪先のところで道が途切れ、そこにあった石を蹴ってみると恐らくはかなり深い崖であるだろうと思える石の転げ落ちる音がした。
ぞっとして身震いがしたが、すぐに右のほうから「そこはだめ こっち!」と言う声が聞こえた。
私はなんの疑いもなく「そっちか」と言って声のしたほうに足を進めた。
それからも時おり「こっち!」と言う声に誘導されながらなぜか自信を持って歩を進めて行った。
それは 何故かずっと前からその声に聞き覚えがあったからだ。
そして危険があるときは必ず「風?」が知らせてくれる。
「そうか!」その時に理解を超えた納得が頭をめぐった。
その後はその声を追うように足早に友人を引っ張りながら歩を進め視界がやや利くようになった頃には畑の端の道に出ていた。
全身の力がすっと抜けてホッとした時に耳元にふっと風を感じてそこを見ると手のひらくらいの大きさでエイと言うかクラゲと言うかそんな感じのモノがふわふわとうっすら浮かんでいた。
そいつは「やっと見えた?」・・・と赤い目で見つめ、すぐにまた風を残してどこかへ消えていった。
友人はと言うとひざに腕を突っ立ててぜぇぜぇと息をしながら人里にたどり着いたのを一心に喜んでいた。
すぐに近くを歩いていた人に駅までの道を尋ねると歩いて5分くらいで「大行司駅」だと教えてくれた。
なんと目的とした駅とトンネルをはさんだ反対側に下山していたのだ。
しかも大行司駅では予定より早い5時45分発の列車に乗車できた。
後から調べてみたのだが障子ヶ岳から大行司への登山道は無いし、途中で県道を渡っているはずだけれどそんな道を渡った覚えも無かった。
帰りの電車で友人が私に聞いた。
「おまえ山の神さんに友達でもおるっちゃろ?」
「なんで」
「なんでって うちらの周りだけ雲が無いちゅうのも変じゃろ?
 なんか道も知っとるように森ん中走って降りるっちゃけ」
その時に前にも何度か同じようなことがあったのを思い出した。
小学生の時にも山で迷って森の中をまっすぐ町まで走って降りたことがあったが確かあの時その声を初めて聞いたのだった。
「神さんやないっちゃ そやけど友達かな」
「そか 便利っちゃ便利やけど変なやつ」
「おかしいと思っとるやろ?」
「いんや 父ちゃん宮司やけんそんな話しにゃ驚かん」

・・とまぁ その変な奴のおかげで無事に山を降りることができましたとさ。

え? そいつはどうしたかって?
今でもたまにふわふわ飛んでますよ(^^)

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